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NASとクラウドストレージの違い|中小企業の選び方7項目

社内の共有フォルダーを見直すとき、「NASを買うべきか、クラウドストレージへ移行すべきか」で迷う企業は少なくありません。結論から言えば、どちらかが常に優れているのではなく、データ量、働く場所、通信環境、管理できる人、復旧目標によって適した方式が変わります。

大容量データを社内で高速に扱うならNAS、社外からの共同作業や運用負担の軽減を重視するならクラウドが有力です。重要データを扱う企業では、日常の共有とバックアップを分けた併用構成も検討できます。

この記事では、NASとクラウドストレージの違いを7項目で比較し、自社に合う方式を選ぶための手順を解説します。

この記事の結論

  • 社内で大容量ファイルを頻繁に読み書きするならNASが向いています
  • テレワーク、複数拠点、外部との共同編集を重視するならクラウドが向いています
  • NASは機器、電源、ディスク、更新、バックアップを自社側で管理します
  • クラウドでもアカウント、権限、契約、データ持ち出し、復旧方法の管理は利用企業の責任です
  • RAIDはディスク障害への備えであり、それだけで誤削除、ランサムウェア、災害へのバックアップにはなりません
  • 「共有する場所」と「復旧するためのコピー」を分けて設計することが重要です

NASとクラウドストレージの違い

NASは「Network Attached Storage」の略で、社内ネットワークなどへ接続して複数人で使うストレージ機器です。ファイルサーバーより小規模に導入しやすく、共有フォルダー、ユーザー管理、バックアップ、スナップショットなどの機能を備えた製品があります。

クラウドストレージは、インターネット経由でサービス提供者の環境にファイルを保存するサービスです。Microsoft 365のSharePoint/OneDriveやGoogle WorkspaceのGoogle Driveなどが代表例です。

大きな違いは保管場所だけではありません。設備の所有、費用の発生方法、アクセス経路、障害時の責任分担、運用作業が異なります。

7項目で比較するNASとクラウドストレージ

比較項目NASクラウドストレージ
1. 初期費用・継続費用機器、ディスク、UPS、構築費が先に発生。保守・更新費も必要利用者数や容量に応じた月額・年額が中心。通信費や移行費も考慮
2. 社内での速度LAN性能とNAS性能が十分なら大容量データを扱いやすいインターネット回線、同期状態、サービス側の制限に左右される
3. 社外・複数拠点利用VPNなど安全な接続設計が必要インターネット経由の利用を前提とし、社外利用を始めやすい
4. 管理負担機器監視、更新、故障交換、容量、バックアップを自社側で管理ハードウェア管理は提供者側。アカウント、権限、契約は自社で管理
5. 障害・停止への備え機器、電源、ネットワークが単一障害点になり得る回線障害やサービス障害時に影響。オフライン利用範囲を確認
6. セキュリティ設置場所、ファームウェア、外部公開、権限設定が重要多要素認証、共有リンク、管理者権限、退職者アカウント管理が重要
7. バックアップ・復旧別媒体・別拠点へのバックアップを自社で設計ごみ箱や版履歴はあるが、保持期間と復旧範囲を契約・設定で確認

1. 費用は3年から5年の総額で比べる

NASは購入時の金額だけでなく、次を含めて考えます。

  • NAS本体とディスク
  • UPS(無停電電源装置)
  • 設計、初期設定、データ移行
  • 保守、故障時の交換用部品
  • 外付けHDDやクラウドなどのバックアップ先
  • 数年後の容量増設・機器更新
  • 管理に使う社内工数

クラウドはライセンス単価だけでなく、利用者数、必要容量、上位プランの機能、退職者データの保管、バックアップサービス、移行支援を含めます。

比較式はシンプルです。

期間内総コスト = 初期費用 + 利用料・保守料 + 管理工数 + 更新・移行費用

安さだけで選ぶと、管理する人がいない、容量が足りない、復旧できないといった問題が後から表面化します。

2. 速度はファイルの大きさと同時利用者数で考える

CAD、動画、写真、印刷データなど大容量ファイルを社内で繰り返し扱う場合、NASはローカルネットワーク内で高速に使える可能性があります。ただし、NAS本体だけ高性能でも、スイッチ、LANケーブル、PC側のネットワーク性能が不足すれば速度は出ません。

文書や表計算が中心で、複数人の共同編集や検索を重視する場合はクラウドが使いやすいことがあります。同期フォルダーへ大容量データを無計画に置くと、回線やPC容量を圧迫するため、保存ルールを決めます。

3. 社外利用は「つながる」より「安全に管理できる」で判断する

NASをインターネットへ直接公開するのは避け、必要ならVPN、アクセス元制限、多要素認証、ログ確認などを組み合わせます。設定や更新を継続できない場合、社外利用を前提としたクラウドのほうが管理しやすいことがあります。

クラウドでも、リンクを知っている全員へ公開する共有設定や、個人アカウントへの保存は情報漏えいの原因になります。部署・役割ごとの権限、外部共有の承認、退職時の停止手順が必要です。

4. 管理者がいないなら運用作業を先に数える

NASには次の作業が発生します。

  • ディスク状態と容量の監視
  • ファームウェアとアプリの更新
  • ユーザー追加・削除とアクセス権変更
  • バックアップ結果の確認
  • 復旧テスト
  • 故障・停電・ネットワーク障害への対応

クラウドでは機器の保守は不要ですが、次の作業は残ります。

  • アカウントとライセンスの管理
  • 多要素認証と管理者権限の設定
  • 共有リンクと外部ユーザーの棚卸し
  • 監査ログとアラートの確認
  • 退職者データの移管・保管
  • 契約終了時のデータ取り出し

IPAの中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引きは、利用範囲、情報の重要度、サポート条件、契約終了時のデータ確保、適用法令などを確認するよう案内しています。

5. 障害時に何時間止められるかを決める

選定前に、次の2点を数値で決めます。

  • RTO(目標復旧時間):何時間以内に業務を再開したいか
  • RPO(目標復旧時点):最大で何時間分のデータ損失まで許容するか

例えば「翌営業日までに復旧、失ってよいのは前日夜のバックアップ以降」と「30分以内に復旧、5分以上のデータ損失は不可」では、必要な構成と費用が大きく異なります。

NASなら予備機、交換ディスク、UPS、復旧手順が必要です。クラウドなら回線障害時の代替回線、オフライン利用、サービス障害時の業務手順を検討します。

6. セキュリティは責任分担を確認する

クラウドへ移せば安全管理がすべて提供者任せになるわけではありません。サービス基盤の保護は提供者が担っても、弱いパスワード、誤った共有、不要アカウント、管理者権限の乱用は利用企業側の課題です。

NASも社内に置くだけで安全とは限りません。初期パスワード、更新停止、過剰な権限、インターネットへの不用意な公開、同じ管理者アカウントの使い回しを避けます。

最低限、次を確認します。

  • 多要素認証を利用できるか
  • 管理者と一般利用者を分けているか
  • 部署・業務単位で最小限の権限になっているか
  • 操作ログを確認できるか
  • 退職・異動時に当日中の変更ができるか
  • 更新情報や障害情報を誰が確認するか

7. RAID・同期・バックアップを区別する

この3つは目的が違います。

機能主な目的防げない代表例
RAID一部ディスク故障時の稼働継続・データ保全誤削除、暗号化、機器全体の故障、火災・盗難
同期複数端末・場所で同じ状態を保つ削除や破損も同期される可能性
バックアップ別の時点・場所からデータを戻す復元テストをしていない構成では復旧保証にならない

IPAが2026年7月に公開した中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第4.0版では、基本対策に「バックアップを取ろう」が追加されました。

クラウドの版履歴も有効ですが、バックアップ要件と同一視せず、保持期間と対象を確認します。例えばMicrosoftは、OneDrive/SharePointのバージョン履歴で以前の版を表示・復元できると案内しています。契約種別や管理設定により条件が異なるため、自社の環境で実際に復元できるか試してください。

どの方式が向いているか

NASが向いている企業

  • 社内で大容量ファイルを頻繁に扱う
  • インターネット回線が止まっても社内ファイルを使いたい
  • 特定の業務機器やアプリがネットワーク共有フォルダーを必要とする
  • 機器、更新、バックアップを管理できる担当者または委託先がいる
  • 保管場所やアクセス経路を自社で細かく設計したい

クラウドストレージが向いている企業

  • テレワークや複数拠点から利用する
  • 文書の共同編集や社外との共有が多い
  • サーバー機器の保守負担を減らしたい
  • 利用者の増減が多い
  • Microsoft 365やGoogle Workspaceをすでに組織利用している

併用が向いている企業

  • 大容量データは社内NAS、共同作業文書はクラウドに分けたい
  • NASの重要データを別拠点・クラウドへバックアップしたい
  • クラウド上の重要データも別系統へ保全したい
  • 災害、故障、誤削除、ランサムウェアを単一の仕組みに依存せず備えたい

併用すると安心とは限りません。どちらが正本か、誰が同期結果を見るか、障害時にどこから戻すかを決めないと、重複・古いファイル・復元ミスが増えます。

選定を進める5ステップ

ステップ1:現在のデータを測る

総容量、月間増加量、最大ファイルサイズ、同時利用者数、社外利用者数を確認します。個人PCやUSBメモリーに散らばったデータも対象です。

ステップ2:データを重要度で分ける

公開情報、社内限定、機密情報、個人情報などに分けます。すべてを同じ権限、同じ保存先にしないことが重要です。

ステップ3:業務停止の許容範囲を決める

RTOとRPOを決め、停電、回線断、ディスク故障、誤削除、ランサムウェアの各場面で復旧方法を書き出します。

ステップ4:3年から5年の費用と運用工数を比べる

初期費用、利用料、保守、バックアップ、移行、社内工数を含めます。容量・人数が増えた場合の追加費用も試算します。

ステップ5:小さく試して復元まで行う

代表的な部署とデータで試行し、保存、検索、権限変更、社外利用、バックアップ、復元まで確認します。導入テストが「ファイルを置けた」で終わらないようにします。

よくある失敗

  • NASのRAIDをバックアップだと思い、別コピーがない
  • クラウドへ移しただけで多要素認証や共有ルールを設定していない
  • 退職者アカウントが残り、共有データの所有者も退職者のまま
  • 容量だけで選び、通信速度や月間増加量を見ていない
  • バックアップは成功表示だが、一度も復元していない
  • 移行後も旧NASとクラウドの両方を更新し、どちらが正しいか分からない
  • 契約終了時にデータをどの形式で取り出せるか確認していない

まとめ

NASとクラウドストレージは、保存場所だけでなく、費用、速度、社外利用、管理、障害、セキュリティ、復旧方法が異なります。中小企業では、製品名から選ぶのではなく、データ量、利用場所、管理体制、RTO・RPOを先に決めることが重要です。

NASを選ぶ場合は、共有フォルダーだけでなく、RAID、バックアップ、UPS、アクセス権、更新、復旧手順まで一体で設計します。株式会社マリートのNASファイル共有システム導入事例では、アクセス権、RAID、UPS連携を含めた構成を確認できます。既存NASの更新を検討している場合は、NASリプレイス事例も参考になります。

自社だけで容量見積もり、ネットワーク、権限、バックアップを決めにくい場合は、ネットワーク構築の対応範囲を確認し、お問い合わせフォームから現状の台数・容量・利用場所を伝えると相談が進めやすくなります。

主要参考情報